ドラッグストア薬剤師の仕事内容とは?年収や労働環境について解説
今までにドラッグストアでの勤務をご経験されたことのない薬剤師の方も多数いらっしゃるかと存じますが、みなさんはドラッグストアに対してどのようなイメージを持たれているでしょうか?
知人の話を聞いたり、WEBの口コミや記事を見たりして、なんとなく「休みが取りにくそう」「遅い時間まで働かないといけない」「忙しそう」といった理由で、転職先の候補から除外しているといったことは無いでしょうか。
今回はドラッグストアで薬剤師として働く場合について具体的に記載していきたいと思います。これから転職をお考えの方や、ドラッグストアと調剤薬局でどう違うのかなど知りたい方はご参考にしていただけると幸いです。
【薬剤師に多い就職先は?】
まず初めに2018年度における薬剤師のみなさんが働かれている就業先別の割合(円グラフ)と、2020年3月卒の薬学部卒業見込み学生の就職状況表を見ていきましょう。
参照元:厚生労働省 2018年医師・歯科医師・薬剤師の概況 など
円グラフに関しては調剤薬局とドラッグストアで区別のない表示となっていますが、表の薬学部卒業生の就職先の割合から概ね調剤薬局とドラッグストアの割合が6:4前後の割合であろうということが想定されますのでそこから薬剤師の就業先の割合を算出すると、ドラッグストアで就業している薬剤師の割合としては、調剤薬局に次いで二番目に多い就業先と言えるでしょう。また、現在の調剤薬局やドラッグストアの数がすぐに大きく増減する可能性は低いので、しばらくは上記円グラフに近い割合で推移していくのではないかと思われます。
なお、実際に就職活動時の人気で見た場合は、医薬品関連企業が群を抜いて人気があります。該当する企業としては製薬会社を筆頭にいわゆる大企業で安定した経営基盤、労働環境も含めた福利厚生面が充実している企業が多いため、採用ハードルはかなり高いです。
また、調剤薬局やドラッグストア、病院などと比べると、未経験での中途入社が困難なこともあり、新卒時の人気が高くなる要因の一つです。
【ドラッグストアと調剤薬局の違い】
それでは実際に就業先として最も多い調剤薬局とドラッグストアの違いについて記載していこうと思います。定義の違いとしては以下の通りです。
<調剤薬局>
薬事法に「薬剤師が調剤(処方箋に基づき薬の調製や間違いが無いかの間さ、患者へ薬の飲み方などを伝える服薬指導をすること)を行う場所」と定められております。
<ドラッグストア>
法的な定義は無いですが、日本ドラッグストア協会が「医薬品と化粧品を中心に、日用家庭用品、文房具、フィルム、食品等の日用雑貨を取り扱うお店」と定義しております。
※詳しく知りたい方は調剤薬局・ドラッグストア薬剤師の仕事内容や年収は?の「調剤薬局とドラッグストアの違いについて」をご覧ください。
【ドラッグストアの仕事内容】
ドラッグストアで働く場合の具体的な仕事内容についてみてみましょう。
はじめにドラッグストアといっても、勤務先がOTC店舗(調剤無し)、調剤併設、調剤専門のいずれに該当するのかによっても業務が変わります。調剤併設、調剤専門の店舗の場合はいわゆる調剤業務(調剤、監査、服薬指導、薬歴管理)と店舗によっては在宅業務が生じることもございます。このあたりは調剤薬局での就業時とあまり変わりない業務ですね。
併せてOTCも行っている店舗の場合には以下の業務も任されることがございます。
① OTC医薬品の販売業務
ドラッグストアに販売されている医薬品には要指導医薬品、第1類医薬品、第2類医薬品、第3類医薬品と種類がわかれております。これらのうち、要指導医薬品、第1類医薬品は薬剤師がいないと販売することができない医薬品です。
これらの要指導医薬品、第1~3類医薬品を求めるお客様に対して、お客様の症状や体質、飲み合わせなどを聞いたうえで適切な医薬品を選択し販売することが主な業務となります。
② 健康相談
ドラッグストアには医薬品以外にも、自分自身の健康を管理するためにサプリメントや健康食品などを求めてこられるお客様も多くいらっしゃいます。そのような方々へ悩みや症状を聞いたうえで、適切な商品を提案したり、必要に応じて医療機関への受診を勧告したりすることが求められます。
③ レジ打ち、品出し、陳列、在庫管理など
お店や企業の方針により異なる場合もありますが、ドラッグストア薬剤師はレジ打ちや商品の品出し、陳列といった店舗運営に関する業務を担当することも多々あります。店舗として販売奨励品の配置場所の工夫やPOP作成など売り場を変えることによって店舗売上も変わってくるため、そういった店舗運営に関するアイデア、創意工夫により貢献することも求められております。
以上です。
もちろん、企業、店舗の方針によって薬剤師にどこまでを任せるのか方針も異なりますのであくまで参考程度に見ていただければと存じます。
【ドラッグストアの労働環境】
皆さんが一番気になる点が労働環境面ではないでしょうか。やはりドラッグストアは営業時間が長く、土日祝問わず営業している店舗が多いため、労働時間が長い、休みが少なそうというイメージを持たれる方も多くいらっしゃるかと存じます。実際に働いている人の1日の流れを簡単に見てみましょう。
あくまで上記は一つのモデルケースではございますが、概ね上記のようなスケジュールでの勤務になることが多いかと思います。また、店舗によっては早番、中番、遅番と3パターンあるケースもございます。
それでは勤務シフトや勤務時間の特徴について具体的に記載していきたいと思います。
・勤務シフト
土日祝を含め営業をしている店舗が多いため、週休2日制や4週8休制などのシフト制を採用している企業が多いです。
調剤薬局では日祝や年末年始、お盆などは近隣の医療機関の休みに併せて調剤薬局も休みになることが多いですが、ドラッグストアの場合、上記期間でも営業をしている場合が多く、その分、調剤薬局と比べ年間休日が少なくなることが多いです。
・勤務時間
店舗営業時間が9時前後から22時前後までと長いため、多くの場合、店舗営業時間により前後しますが早番(9時~18時)、遅番(13時~22時)というような時間帯での勤務シフト制となることが多いです。また、医療機関の営業時間が19時前後までのことが多いため、20時以降などの遅い時間は一人薬剤師体制となる場合も珍しくないです。
また、実際に風邪などの流行による冬場や花粉症シーズンの春先などいわゆる繁忙期は比較的残業が発生しやすく、調剤薬局では平均すると月10時間前後の残業時間に対して、ドラッグストアの場合は平均で月20時間前後程度の残業と調剤薬局と比べると残業が多めの傾向にあります。ただ、ドラッグストアの場合残業代も別途支払われる企業が多く、残業した分収入も増えます。
もし土日休みがいい、遅番をしたくないという方の場合、正社員では難しいですが、パートであれば調剤薬局と同じような勤務シフトでの勤務が相談できる場合もございます。
【ドラッグストア薬剤師の年収】
それではドラッグストアで勤務されている薬剤師の平均年収はどの程度なのでしょうか。
以下の表は弊社調べによる勤務先別での平均年収となります。
上記の通り、調剤薬局や病院と比べると平均年収は高いことがわかります。ドラッグストアでは地域手当などの福利厚生面が充実していることが多く、また前項に記載の通り残業も少なくないため、地域、店舗によっては20代の勤務薬剤師でも年収600万以上の収入を得ている方もいらっしゃるなど、やはり給与面では高収入を得られることが多いです。
またドラッグストアの場合、調剤薬局と比べパート時給が比較的高い傾向にございます。パートであれば調剤薬局と同じような勤務シフトでのご相談ができる場合もありますので、積極的にドラッグストを検討してみることも良いかと存じます。
【ドラッグストアで勤務するメリット、デメリット】
それではドラッグストアで勤務をする場合の具体的なメリット、デメリットについて記載していきたいと思います。
◆ドラッグストア勤務のメリット
1. 給料が高い
調剤薬局や病院と比べて年収が高いということは大きなメリットの一つです。
特にドラッグストアの場合、営業時間が調剤薬局や病院と比較すると長いため、店舗によっては残業代だけでもかなりの額になるケースもあるので、収入を重要視されている方には特におすすめの勤務先です。
正社員のみでなくパート時給もエリアや店舗によっては調剤薬局に比べ数百円高い場合もあるなど高時給を得やすいです。
2.福利厚生が充実している
ドラッグストア業界では100店舗を超える企業規模の大きい企業が大半を占めております。企業規模が大きいと、残業代の規定や産休や育休などの福利厚生面も整っており就業条件面で安心して働くことができます。
また多くの場合近隣エリアで複数店舗があるので、お休み希望や急な病欠なども含め人員面でフォローしやすい環境であることが多いです。
3. 調剤業務以外のスキルが身につく
ドラッグストアでの勤務の場合、OTC販売を含めた接客やレジ打ちに加え、品出しや在庫管理、商品販売のためのポップ作成など店舗運営のノウハウを身に着けることのできる職場です。
◆ドラッグストア勤務のデメリット
1. 勤務がシフト制である
多くの場合、ドラッグストアでは土日祝も含め年中無休での営業をしていることがほとんどです。したがってお盆や年末年始、GWなどの連休は従業員も休み希望とする方が多いためお休みを取れる可能性は低くなります。
また、調剤薬局や病院と比べ、20時以降の遅い時間までの遅番のシフトが求められる可能性が高いためその点も人によってはデメリットです。
2.調剤業務以外の業務も発生するため忙しい傾向がある
メリットでも記載致しましたが、ドラッグストアの場合、OTC販売を含めた接客やレジ打ち、品出し、在庫管理、ポップ作成など店舗運営に関するその他の業務も多くあります。
そのため調剤業務、病棟業務のような薬剤師業務だけに集中すればいいというわけではないため、比較的忙しい傾向がございます。
【ドラッグストアで働くために必要なスキル】
実際にドラッグストアで働く際に求められるスキルはどういったものなのでしょうか。
多くのドラッグストアで求められるスキルとしては主に次の2つが挙げられます。
ドラッグストアでは店舗での販売スタッフとしての側面が強く、調剤薬局とは求められるコミュニケーション能力の質が異なります。相談したいことがあり声をかけてもらいたいお客様もいれば、声をかけてほしくないお客様もいるでしょう。そういったお客様の求めるものを察し、提供できる能力が求められます。
調剤薬局とは異なり、処方箋に基づく薬を渡すのではなく、お客様の症状や希望から要指導を含む医薬品や健康食品、サプリメントなども含めた幅広い知識をもとに薬剤師自身で最も適した商品を提案できる能力が求められます。
調剤薬局とは異なり様々な目的でお客様は来店されるので、客層や来店頻度なども含め大きく異なります。調剤薬局から転職をされる方はそういった客層の違いなども意識した対応を心がけると良いと思います。
【ドラッグストアで働くことがお勧めの人】
実際にドラッグストアで働くことがお勧めの人はどのような人なのでしょうか。
これまでに記載してきたメリット、デメリットや求められるスキルなども踏まえた、このような人には向いているというポイントを見てみましょう。
<ドラッグストア勤務がお勧めの人の特徴>
・初対面でも明るくコミュニケーションをとることができる人
・調剤など薬剤師業務以外の業務も抵抗なくできる人
・店舗運営に興味のある人
・土日祝の勤務が平気な人
・接客業が好きな人
上記のような方々はドラッグストアに向いている方と言えるのではないでしょうか。
もちろん上記は一般的に向いている項目を記載させていただいているので、当てはまらないからと言って勤務が難しいわけではないですし、当てはまらない方でもご活躍されている方もたくさんおりますので、ご興味をお持ちであれば是非前向きにご検討していただければと存じます。
【ドラッグストアへ転職する際の注意点】
それでは実際にドラッグストアへ転職をする場合、特に注意しておいた方が良い点などはあるのでしょうか。ドラッグストアでのご就業経験が無い場合は、実際に入社した際の働き方のイメージをしっかり持ったうえで判断をされたほうが、早期退職を防ぐことができるので良いでしょう。例えば
・実際の業務内容(調剤業務のみ、OTCもあるのか、レジ打ちや品出しはあるのか、ポップ作り等もあるのか)
・勤務時間について(遅番は何時くらいまでなのか、勤務日のうち何回程度遅番なのか)
・お休みについて(月8休などのシフト制か、年末年始休暇や夏季休暇はあるのかなど)
・どの程度の期間で配属店舗の移動があるのか(転勤ありの場合は転勤の頻度)
あくまで参考ではございますが、このような質問の回答からどのような仕事をこなしながら、どのような働き方をするのかイメージすることができるのではないでしょうか。
もちろん、勤務時間やお休みなどをしつこく聞きすぎると選考においてマイナス評価につながる可能性もあるので、「ドラッグストアでの勤務経験が無いため、長期的な就業をするためにしっかりと働く姿をイメージしたいのでご質問をさせていただきたいのですが」というような前置きをしたうえで確認をされるとより良いと思います。
※紹介会社経由で求人紹介がされているのであれば、求人紹介時点で紹介会社経由で確認してもらうなどでも大丈夫です。
【ドラッグストア薬剤師に関するよくある質問】
最後にドラッグストア薬剤師に関するよくある質問を以下にまとめていきたいと思います。
よくある質問1:ドラッグストアは忙しい?
一般的な調剤薬局と比べるとやはり忙しいことが多いです。もちろん調剤薬局同様に店舗の人員状況や時期的な要因、企業によりまちまちではございますので、中には忙しくない店舗などもございます。
よくある質問2:ドラッグストアは給与が高い?
こちらも数値としては調剤薬局や病院と比べ年収が高いという数値が出ておりますので、一般的には二つと比べると給与が高いと言えます。たたその分、遅い時間や土日祝での勤務など残業も含め忙しいことが多いので一長一短であると思います。
よくある質問3:ドラッグストアの福利厚生は充実している?
社員数が多く中規模以上の企業が多くを占める業界であり、産休育休や時短勤務、介護休業など一通りの福利厚生は整っている企業が多いです。また企業によっては別途関連施設などをお得に利用できる制度があるなど、調剤薬局と比べると充実している傾向が強いです。
よくある質問4:ドラッグストアにキャリアアップはあるの?
一般的には調剤薬局と同じように勤務薬剤師から薬局長、エリアマネージャーという流れでキャリアアップしていくことが多いです。ただ、調剤薬局と比べ企業規模が大きいため、必然的にポストの数も多くなり、ライバルも多くなるというようなイメージです。ドラッグストアだからキャリアアップできないといったことはございません。
【まとめ】
これまでドラッグストア薬剤師について、実際の仕事内容や働き方などまとめてきましたが参考になりましたでしょうか。
今まであまりドラッグストアでのキャリアについて考えたことのなかった方などの参考になれば幸いです。
近年、薬剤師不足も解消され売手市場から買手市場に変わりつつある転職市場において、短期離職などが続いてしまうと容易に次の職場を探すことも難しくなりつつあります。ドラッグストアだけでなく、調剤薬局や病院なども含め転職を検討されている方は、まずは最新の求人情報を収集して、現在どのような求人があるのかを踏まえて転職をするのかしっかりと判断されてみてはいかがでしょうか。
ファル・メイトでは、求職者様の今後のキャリアプランを踏まえてより良いご提案ができるよう専任コンサルタントが手厚くサポートさせていただいております。転職先をお探しの方はもちろん、転職をしようか迷われている方などもお気軽にご相談をいただけますと幸いです。
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