薬剤師の将来性とは?転職市場の動向やスキルアップの方法をご紹介
少し前までは「薬剤師」というと国家資格であり、比較的高い年収で安定して働くことのできる資格というイメージを持たれている方も多かったと思います。
しかし近年、薬学部の増設による薬剤師数の増加に加え、AIの普及による自動化の流れのなかで、薬剤師の仕事が少なくなり飽和するような状況になるのではないかと将来を不安視される方も増えてきております。薬剤師の飽和については近年言われ始めたことではなく2010年以前からいわれていたことですが、実際のところ薬剤師の将来性はどうなのでしょうか。今回は転職市場の動向などを踏まえて、薬剤師の将来性や長く薬剤師として活躍していくためのスキルアップの方法などをまとめていこうと思います。
【薬剤師の転職市場の動向】
1.薬剤師の有効求人倍率
最初に薬剤師における転職市場の動向を知るうえでわかりやすい指標である有効求人倍率をみていきたいと思います。
参考数値として厚生労働省が「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」より発表している、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師の4つの職種の合算での有効求人倍率の年度ごとの推移データを見てみましょう。
薬剤師とは異なる職種も含んだデータではございますが、有効求人倍率が年々低下していることは数値上でも明らかです。
実際に薬剤師専門転職エージェントとしても、求人数の減少は明らかに感じる中で、求人数に併せて求職者数も減っているかというとそこまでではなく、有効求人倍率としては下がっているということは間違いないかと思います。
特にここ数年における薬剤師転職市場における状況の変化は顕著であり、年々、企業(店舗)への応募者数の増加(採用倍率の増加)により、書類選考通過率の低下などの変化を強く感じる機会が増えてきておりますので、薬剤師に限った有効求人倍率も間違いなく下がってきていると断言できます。
2.薬剤師の需要が伸びている業界
それでは調剤薬局、ドラッグストア、病院、製薬関連企業といった業界別で比べてみた場合に、薬剤師の需要が伸びている業界はあるのでしょうか。
業界別に見てみると、病院、製薬関連企業はあまり変わらず横ばいの状況です。特に製薬関連企業は未経験での中途入社が大変困難な業界であり、需要が増えた場合でもその恩恵を受けることができる薬剤師は限られたごく一部の方のみなので全体としてあまり市場に影響を及ぼさないでしょう。
調剤薬局に関しては、大手では新卒採用人数を増やしている傾向がありますが、中途も含め業界全体をみると需要は少なくなっております。また、調剤薬局業界内では大手を中心にM&Aの動きが年々増えてきていることもあり、将来的には企業規模の拡大、業務効率化に伴い必要な薬剤師の数が減っていくことが予想されます。したがって需要は今後も継続して減っていくことが予想されます。
最後に、ドラッグストア業界に関しては薬剤師の需要が高まっていると言えるでしょう。業界としてコロナウイルスによる影響がある中でも業界売上が順調に伸びており、また大手ドラッグストアの調剤を増やす取り組みを積極的に行っております。そのため、各社積極的に薬剤師の確保に動いており、需要が伸びていると言えるでしょう。
【性別で見る薬剤師の将来性】
・女性薬剤師の場合
薬剤師の場合、女性や約2/3を占める女性の多い職種となっております。そのため、産休育休などに対する理解の高い企業も多く存在します。また、薬剤師の就業先として大きな割合を占める調剤薬局は店舗数も多く、条件をえり好みしなければ一般的な職種の中でライフプランに併せて時短勤務なども含め求人を探しやすい職業であることは間違いございません。安定して働ける、収入を得ることができるという面で将来性も含めて安心できる職業ではないかと考えられます。
ただ一方で女性が多い分、午前のみ、夕方までなどの時短勤務は希望者の数も多く、競争率が高いことも事実です。産休育休明けすぐに時短勤務で復帰をしたいと考えている方は、企業に長く貢献しておくことが時短勤務実現の可能性を高める一つの方法だと思います。
・男性薬剤師の場合
前出の通り、薬剤師業界としては有効求人倍率も年々下がってきており、今までのように安易に転職ができる市場ではございません。そのような状況の中では、これまでのような高年収案件が簡単に見つかるわけでもなく、安易に転職を繰り返すと次に就業できる転職先が見つからなくなる可能性もあり、これまでのような薬剤師免許証さえあれば将来性もあり安心という環境では無くなりつつあります。もちろん転職をすることが悪いことではございませんので、明確な理由、意思のもとに転職を行うことは良いと思います。ただ、薬剤師の有効求人倍率が下がり、年収相場も下がってきている中で、目先の好条件求人に安易に飛びつくのではなく、これから先の長期的なキャリアビジョンをしっかりと考えて行動をしていくことが求められるようになると思います。
【業種別の薬剤師の将来性】
それでは業種別に薬剤師の将来性をそれぞれ見ていこうと思います。
1.調剤薬局
調剤薬局全体として薬剤師の充足、求人数の減少が見受けられる業界です。主な要因としては薬学部数の増加に伴う薬剤師の増加や、大手を中心としたM&Aの加速に伴い、企業規模の拡大と業務の効率化による必要薬剤師数の減少も考えられます。
また、調剤報酬額を減らす動きが目立つことなどから、国としても調剤薬局の数を減らす方向で動いていることは容易に想像がつきます。
上記のような流れの中で市場の将来性としては今までのような安定感は無くなり、中長期的にみると不安の残る市場と言えるのではないでしょうか。
2.ドラッグストア
業界の市場規模としても伸びている業界であり、調剤併設店の増加の動きを積極的にとっている中で今後も安定して薬剤師の需要が見込まれる市場です。
ただし、調剤併設店を増やす流れがひと段落するとその後は薬剤師数を維持する流れになることが想定されるのでいつまでも続く可能性は低いと思われますが、当面は現在のような状況が続いていくことが想定されるため、当面は将来性も安心でいる業界と言えるのではないでしょうか。
3.病院
病院に関しては、今後も有効求人倍率はほぼ横ばいか緩やかな低下の状況が当面は続いていくことが想定されます。
理由としては、2012年の病院数8565院から2018年の病院数8372院と現象はしておりますが、上記期間内での一般病棟の平均赤字割合は約37.4%、療養型病院の平均赤字割合は約21.1%、精神科病院の平均赤字割合は約27.0%(いずれも弊社独自調べ)と赤字経営の割合が高い経営状況にもかかわらず病院数の変化は小さいこと、今後より高齢者が増える社会において必要とされることが想定されることから、今後も施設数の大きな変化が無い状況が続いていくことが予想されます。
したがって、業界の将来性としては横ばいではありますが安定していると言えるのではないでしょうか。
4.製薬企業
製薬企業の市場はかなり成熟しており、大企業で労働条件もかなり良い環境が整っていることからも将来的にも安心できると言えるのではないでしょうか。
有効求人倍率を見た場合も、未経験からこの業界に転職をする難易度はかなり高いため、新卒から経験を積まれている方の業界内での転職、異動がメインであり、大きな有効求人倍率の変動はございません。
あえて不安要素を上げるのであればIQVIAがまとめた2021年-2025年の期間における世界医薬品市場予測によると、主要国のなかで唯一、日本がマイナス成長となる可能性があることくらいではないでしょうか。とはいえ、市場規模も約10兆円と大きく、参入障壁も高い業界であることから今後も安泰と言えるのではないでしょうか。
【薬剤師の労働環境の変化】
これまでの薬剤師の労働環境の変化としては、調剤報酬の改定や登録販売者の販売可能範囲の法改定など小さくない状況の変化が生じてきました。
ただ今後、薬価改定が2年ごとから毎年への変更や将来的なリフィル処方の導入、オンライン投薬が可能になる法改正などといった、今まで以上に大きい変化が生じる可能性の高い業界であると言えるのではないでしょうか。
上記の変化が実際に薬剤師業界に対してどのような影響を及ぼすのかはわからない部分も多くありますが、少なくとも薬剤師業界全体においてかつてのような売手市場に変化する影響を及ぼす可能性は限りなく低いことが想定されるため、企業に必要とされる薬剤師となるためのキャリア形成を今まで以上に考えていく必要が高まるのではないでしょうか。
【薬剤師として派遣で働く際の注意点】
ファル・メイトでも多くの薬剤師派遣求人を取り扱っておりますが、今回は派遣で働く際の注意事項についても記載していきたいと思います。
派遣で働く場合の注意点としては主に以下の3点が挙げられます。
1.有期契約のため契約期間ごとに満了の可能性がある
派遣で働く場合の主なメリットとして、高時給での勤務ができるという点が最初に挙げられますが、逆に言うとそれだけ派遣は人件費が高いということです。派遣を募集する薬局の主な理由の一つが退職者などの欠員の補填であり、あくまで正社員やパート社員を採用できるまでの繋ぎとして利用されるケースが多いです。コロナウイルスによる最初の緊急事態宣言からの一定期間などは調剤薬局の患者数も少なくなり、顕著に派遣求人が少なくなったこともあります。薬局の人員状況、売上状況により契約満了となるケースも多々あるため、直接雇用と比べると安定して働き続けることは難しいというリスクがあることは認識したうえで検討をされたほうが良いでしょう。
2.勤務地や勤務日、勤務時間の希望が通るとは限らない
派遣でご依頼をいただく場合、企業より店舗と勤務日数や時間帯を指定したご依頼をいただくことが大半です。そういった場合に、ご自身の希望と完全にマッチしない場合、企業側としては条件に合う方が他にいた場合、そちらを優先という判断になるケースも多いので、希望条件に固執しているとなかなか就業先が見つからないというリスクもあります。
勤務地についても同様に、希望のエリアで派遣求人がなかなか出ないというタイミングもあるので、派遣である程度安定して就業しようと考えられている方は、ある程度働き方、条件面で柔軟な対応ができるようにしておいた方が良いでしょう。
3.派遣の場合、育休の取得条件が増える
一般的に派遣社員であっても有給休暇や産休育休の取得に関しては、正社員と変わりなく取得できるように法律で定められております。
ただ、育児休暇の取得に関してのみ、派遣社員の場合、「育休を取得する時点で、過去1年以上同じ派遣会社で働いていること」という条件が追加されます。
知らずに産休取得前に派遣元を変更してしまったため、育児給付金を受給できなかったというケースも実際にあるので、注意しておいた方が良いでしょう。
以上です。
今回は派遣就業時の注意点をピックアップして記載させていただきましたが、もちろん派遣で就業することのメリットもございます。詳細を知りたい方は「派遣薬剤師として働くメリット・デメリットとは?」をご覧ください。
【将来も薬剤師として働くためにできることとは】
それでは将来も長く薬剤師として働くためにできることは何があるのでしょうか。今回は将来転職をする際に、取得、経験をしておくことで、転職活動をする際にプラスに評価されることの多い事項を3つ記載したいと思います。
もちろんこれらの経験があることは現在の職場での評価にもプラスに繋がりやすいことですので、現職先でこれからも活躍したいという方も参考にしてください。
① 認定薬剤師の取得
最初に挙げられるものとしては認定薬剤師の取得ではないでしょうか。年々、認定薬剤師を取得される方も増えてきておりますが、認定薬剤師を取得しているということは薬学に関する情報収集、勉強を普段から行っている学習意欲の高い方と言える一つの目安となります。面接や社内での査定においては当然、学習意欲のない方より学習意欲のある方の方が評価されることが多いため、取得しておくことでプラスの評価を得ることができます。
例えば面接時に現職先が小児科メインなので、勉強して小児薬物療法認定薬剤師の認定を取得しましたと言った回答があると、勤務先の科目を普段から勉強される方だなと評価されます。
② 管理薬剤師としての経験
20代のころはあまり聞かれないかもしれませんが、30代を過ぎてくると面接の場でも管理薬剤師の経験の有無を質問される機会も増えてきます。
ひとくくりに管理薬剤師といっても、企業や店舗などにより行わなければいけない業務範囲や責任などは様々であり、管理薬剤師としての経験があるというだけで大きく評価されるわけではございません。管理薬剤師としてどのような業務を行ってきたのかに加え、店舗マネジメントを行う上で取り組んでいた工夫や考えなども併せてしっかりとお伝えすることでより高い評価を得られる可能性が高まります。
③ かかりつけ薬剤師になる
近年、国の方針もあり薬局も積極的にかかりつけ薬剤師の取得を促している企業も増えてきております。かかりつけ薬剤師となるためにはいくつかの条件の一つに、一定の期間内に専門の研修を受けることで必要な単位の取得が必須となるなど、研修を受講する時間なども必要となります。そのため、かかりつけ薬剤師になることに積極的な方であれば、企業にとっても加算が増える可能性があり良い評価につながりやすいです。
【まとめ】
今回は薬剤師の将来性について薬剤師の転職市場の動向から「業種別」、「性別」、「労働環境の変化」からまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。
市場として今までの売手市場から緩和されつつあることは間違いございません。ただ、2022年の4月より日本でもリフィル処方の導入が濃厚と大きな変化が迫っております。
直近での転職をお考えの方はもちろんのこと、転職を検討中の方なども含め希望エリアでの市場を把握したうえで行動をすることがより大事になってくることでしょう。
ファル・メイトでは、求職者様の今後のキャリアプランを踏まえてより良いご提案ができるよう専任コンサルタントが手厚くサポートさせていただいております。転職先をお探しの方はもちろん、転職をしようか迷われている方などもお気軽にご相談をいただけますと幸いです。
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